この講座では、仕事を「作業」の単位に分けて考えます。 「試験報告書を書く」は仕事の名前で、作業ではありません。 その中にある「試験データを集める」「グラフを作る」「考察を書く」の1つ1つが作業です。
なぜ分けるかというと、道具が効くのは作業の単位だからです。 報告書づくりを丸ごとAIに任せることはできません。 でも「グラフの元になる表を整える」なら、道具で軽くできるかもしれません。
頻度(ひんど)は、その作業をどれくらいの回数やるかです。 手間は、1回やるのにかかる時間です。 この講座では、どちらも「1週間あたり」に直してそろえます。
○ 混ざりやすい言葉:「面倒な作業」と「手間の大きい作業」は別物です。気が重いだけで5分で終わる作業もあります。ここでは気分ではなく、時間で測ります
効率化は、道具からではなく作業から探します。 道具の紹介を読むと「これは便利そうだ」と思います。 でも自分の仕事のどこに当てるかが決まっていないと、試して終わりになりがちです。
逆に、時間を食っている作業が分かっていれば、話は早くなります。 「この作業を軽くできる道具はあるか」と、探す向きが決まるからです。 病院でも、薬の一覧から選ぶ前に、まずどこが痛いかを聞かれるのと同じです。
まず、先週1週間にやった作業を書き出します。 カレンダーや送ったメール、作ったファイルを見返すと思い出しやすくなります。
書き出す時のコツは、1行を1つの作業にすることです。 「週報」と書くより、「各自の進み具合をTeamsで聞く」「Excelにまとめる」「上司にメールで送る」と分けて書きます。 分けておくと、後で「この部分だけ道具に任せる」という選び方ができます。
「AIを入れるなら、一番難しい仕事から」と考えがちです。 でも難しい仕事ほど、人の判断が多く入っています。 最初は、簡単だけど回数の多い作業の方が、効果が見えやすいんです。
書き出した作業に、頻度と1回の手間を付けます。 頻度×1回の手間で「週あたりの時間」を出し、大きい順に並べます。 上に来た作業ほど、軽くした時に戻ってくる時間が大きくなります。
時間は正確でなくて構いません。 「だいたい30分」くらいの見当で十分です。 大事なのは、作業どうしを同じものさしで比べることです。
ある機械設計のグループで、1人の担当者が作業を書き出したとします(架空の例です)。
| 作業 | 頻度(週) | 1回の手間 | 週あたり |
|---|---|---|---|
| 試験装置のCSVデータをExcelに貼ってグラフにする | 5回 | 30分 | 150分 |
| 部品表(BOM:部品の一覧表)と図面の部品を照らし合わせる | 2回 | 60分 | 120分 |
| 試験報告書の下書きを書く | 0.5回(月2回) | 240分 | 120分 |
| 打ち合わせの議事録をまとめる | 3回 | 30分 | 90分 |
| 過去の仕様書を探して、問い合わせに答える | 4回 | 20分 | 80分 |
| 週報をまとめて送る | 1回 | 45分 | 45分 |
| 出図(図面を正式に出すこと)の承認を関係者に連絡する | 3回 | 10分 | 30分 |
並べてみると、気が重い試験報告書より、毎日のデータ貼り付けの方が時間を使っていると分かります。 こうした発見は、書き出して掛け算をしないと見えてきません。
表とは別に、頻度の多い・少ないと、手間の大きい・小さいで4つのマスに分けて眺める方法もあります。 「多くて大きい」マスは最優先の候補です。 「少なくて小さい」マスは、今回は手を付けなくて構いません。
並べた表の上から3つを、効率化の候補にします。 卒業課題でも、この3つを使います。
例のグループなら、データの貼り付け・部品表の照合・試験報告書の下書きが候補です。 どの道具をどう当てるかは、No.02(後で出ます)で考えます。 ここでは「何を軽くするか」が決まれば十分です。
週あたりの時間が大きくても、外した方がよい作業があります。 安全に関わる最終判断や、設計の妥当性を確かめる確認です。 こうした作業は、道具で下準備を軽くすることはあっても、判断そのものは人が持ちます。
迷った時は、作業をもう一段細かく分けてみてください。 「部品表の照合」なら、「違いを洗い出す」部分は軽くできても、「違いを直すか決める」部分は人に残ります。
書き出しや掛け算が面倒なら、AIに頼めば手伝ってくれます。 頼み方の例:「私は機械設計の担当です。先週やった作業を下に書きます。1行1作業に分けて、頻度と1回の時間を聞き返しながら、週あたりの時間の大きい順に表にしてください」。 ただし、社外秘の中身は書かずに、作業の名前だけで頼んでください。
○ 関係する単元:振り分け方はNo.02。会社の情報をAIに入れてよいかはNo.10
○ この単元の表は、卒業課題まで使います。メモでもExcelでも残しておきます
作業を1行ずつ書き出し、頻度×1回の手間で週あたりの時間を出して並べる。上から3つが効率化の候補。
問1 設計担当のあなたは、効率化を始めようとしています。最初にやることとして、この単元の考え方に合うのはどれですか。
問2 次の作業のうち、週あたりの時間が最も大きいのはどれですか。
問3 「部品表の照合」は週あたりの時間が大きい作業です。候補にする時の扱いとして適切なのはどれですか。
出典:この単元は作業の見つけ方の考え方を扱い、製品の機能には触れていません。道具の事実はNo.02以降の出典を見てください。